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じわじわと、喩えようのない圧迫感が襲い来る。体の芯は熱をもってもがき苦しんでいるのに、手も足も唇も一切の力をなくして凍えていた。
まだ見開いたままの瞳には、人々の歓喜の表情が浮かぶ。
異物は排除した。
封印の楔(くさび)を解く魔物は排除した。
これで世界は守られる。
そんな顔だった。
柘榴は最期の力を振り絞って、口を開いた。
「わたくしを殺すというのならば、わたくしの心を殺せば良い。
二度とわたくしのアトマがさまよわないよう。
二度とわたくしのアトマが蘇ろうなどと思わぬよう。
絶望の限りを尽くして、わたくしの心を砕いて下さいませ」
かすみゆく視界の中で、人々は泣いているようにも見えた。
だが、それを確かめる術(すべ)は、もうない。
柘榴の意識は、途絶えた。
(鈴木、あなたも薄情ね。こんな時に、わたくしの側にいないなんて……。
わたくしの心を砕いてくれて、ありがとう)
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