18人が本棚に入れています
本棚に追加
──わたくしは、夢を見る。
幸せな、夢を──
新月が朧気に闇夜に滲み、星は瞬きを忘れて天に浮かんでいる。
空を見渡すのみならば辺りに変わった様子はない。
柘榴はゆっくりと重い瞼を開けた。
著しく酸素の減少した肉体は人形のように力をなくして横たわり、手足は麻痺して何の感触もない。
モザイク越しのはっきりしない視界を、柘榴は一度閉じた。
未だに思考が戻りきらないぼんやりした頭の中は、現実を認識するよりも先に不思議な快感を味わっていた。
宙に浮いているかのような、浮遊感。手放した意識の狭間で感じる、奔放感。胸を痛めるすべて、煩わしいすべてから解き放たれたかのような、解放感。
それらは際限なく柘榴の心を癒やしては踊らせた。
夢うつつの世界から、目醒めたくはなかった。
しかし、不意に襲い来た頭痛の激しさに柘榴は思わず顔をしかめる。
最初のコメントを投稿しよう!