葬送歌

3/44
前へ
/69ページ
次へ
脈打つたびに、その鼓動までもが痛みを伴って頭に響く。 取り戻された意識から、柘榴は自分が今生きていることを認識した。 痛みの波が押し寄せるたびに、願いとは裏腹な、胸が悪くなる“生の喜び”を感じる。 それは最早、本能だった。 柘榴はモザイクの目を、またゆっくりと開いた。 輪郭のない影が、無数に柘榴を取り囲んでいる。すぐにそれは、柘榴を追い立てた街の人々だということに気づいた。 ──何故わたくしにとどめを刺さなかったのかしら。 何故わたくしは生きているのかしら── この上彼らは何を求めるのか。疑問と恐怖が湧き上がったところで、柘榴はとてつもない違和感を覚える。 一切の気配が、感じられないのだ。 木々を渡る風の感触も、森のざわめく音も、奇妙な動物や虫たちの鳴き声も。 そして、あれだけ柘榴を傷めた人々の怒号も。 ひっそりと静まり返る、というものではない。 辺りは、完全なる静寂であった。 意識が明瞭になるにつれて視界が晴れる。 柘榴は人々の姿を見て、声にすらならない叫び声をあげた。 「────ぁぁっ!!」
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加