614人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
――after organism
side.A
気付けば、一時渡米が来週に迫ってきていた。
準備に仕事にバタバタしていて、今日は無理矢理時間を作って、かめんちに押しかけている。
「かめかめかめ―」
「あーはいはい」
ソファで今日のニュースに目を向けるかめに絡みつく。
ウザそうだけど、スポーツニュース中じゃないから怒られはしない。
今はペナントレースが終わって、クライマックスシリーズのさなか。
そして日本シリーズが始まる頃には……。
……。
「かめかめかぁめ~!!」
「…お前、いい加減ウザイ」
ちょっとしたことで地味に凹む、言うなれば渡米ブルー。
そんなジョーチョフアンテイ?な今の俺に、かめはいつもと変わらず冷たい。
「…大丈夫だよ。ちゃんと見ててやるから」
「え?」
「行けはしないけど、……」
冷たくなんかなかった。
俺の大好きなかめは、やっぱり強くて優しい。
よしよしと撫でられる頭が気持ちよくで、そのまま導かれるようにキスをした。
女の子みたいに柔らかくはないけど、いつだって俺の全てを受け入れてくれるアヒル口。
(いや、ヤラシイ意味だけじゃなくてね?)
叱ってくれて、許してくれて、愛してくれるのは、このかめだけ――――…
「かめ、…いい?」
キスの合間に、少しだけ久しぶりの誘い文句。
「今更何確認してんの?」
と、早くも覆いかぶさる体勢になっていた俺の肩に、かめが手を回した。
…ヤバイ。
可愛い可愛い可愛い大好き。
「かぁめ―――――!!」
「わっばか!ここで盛んな」
思わず抱き着こうとしたら、顔面を両手で押さえ付けられた。
「ひどいーかめぇ~~」
「ふはっ…だから情けねー面すんなっつの」
そう笑って、テレビのリモコンを手に取るかめ。
そしてテレビの電源を切る。
「…ベッド行こうぜ」
静かになったリビングに、さっきの俺なんか逆立ちしたって敵わない、かめの誘い文句。
それに追い打ちをかける、熱っぽい表情を向けるかめに、俺の元から少ない理性は一気に吹っ飛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!