百聞は一見に如かず

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  ――after organism side.A 気付けば、一時渡米が来週に迫ってきていた。 準備に仕事にバタバタしていて、今日は無理矢理時間を作って、かめんちに押しかけている。 「かめかめかめ―」 「あーはいはい」 ソファで今日のニュースに目を向けるかめに絡みつく。 ウザそうだけど、スポーツニュース中じゃないから怒られはしない。 今はペナントレースが終わって、クライマックスシリーズのさなか。 そして日本シリーズが始まる頃には……。 ……。 「かめかめかぁめ~!!」 「…お前、いい加減ウザイ」 ちょっとしたことで地味に凹む、言うなれば渡米ブルー。 そんなジョーチョフアンテイ?な今の俺に、かめはいつもと変わらず冷たい。 「…大丈夫だよ。ちゃんと見ててやるから」 「え?」 「行けはしないけど、……」 冷たくなんかなかった。 俺の大好きなかめは、やっぱり強くて優しい。 よしよしと撫でられる頭が気持ちよくで、そのまま導かれるようにキスをした。 女の子みたいに柔らかくはないけど、いつだって俺の全てを受け入れてくれるアヒル口。 (いや、ヤラシイ意味だけじゃなくてね?) 叱ってくれて、許してくれて、愛してくれるのは、このかめだけ――――… 「かめ、…いい?」 キスの合間に、少しだけ久しぶりの誘い文句。 「今更何確認してんの?」 と、早くも覆いかぶさる体勢になっていた俺の肩に、かめが手を回した。 …ヤバイ。 可愛い可愛い可愛い大好き。 「かぁめ―――――!!」 「わっばか!ここで盛んな」 思わず抱き着こうとしたら、顔面を両手で押さえ付けられた。 「ひどいーかめぇ~~」 「ふはっ…だから情けねー面すんなっつの」 そう笑って、テレビのリモコンを手に取るかめ。 そしてテレビの電源を切る。 「…ベッド行こうぜ」 静かになったリビングに、さっきの俺なんか逆立ちしたって敵わない、かめの誘い文句。 それに追い打ちをかける、熱っぽい表情を向けるかめに、俺の元から少ない理性は一気に吹っ飛んだ。  
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