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ことの始まりは一本の電話から。
『…でさ、やっばアイツってアホっつーか天然!なんて言ったと思う?(笑)』
「さぁ?検討もつかないけど…」
その天然でアホなアイツとやらは、只今俺のひざ枕でアホ面晒して寝こけてますが。
とは、言えないけど。
俺達の恩人でもあるこの優しい先輩は、後輩のコンサートにゲスト出演しては、こんな風にわざわざ報告電話を入れてきやがる。
それはうちのメンバーだろうが他の後輩グループだろうが、関係はないらしい。
(まーたぶん、単に話したいだけなんだろうけど。…ちょっとウザイ)
『女湯入りたいってゆーのは、俺もまだ解かったんだよ。男なら誰でもそうゆう願望あるしな?』
「はぁ…」
気のない返事。
だって銭湯の女湯なんか、ババァとオカンぐらいの年代しか入ってないイメージがある。
どーせなら、モデルや女優さん御用達の高級スパに潜入してみたいっすよ。
とかも、言わないけど。
いつも通り右から左に受け流しながら、ケータイを耳と肩で挟み固定する。
そのまま暇つぶしに、渦中の人の耳を引っ張って遊んでみたりした。
…起きやしねー。
つまんねーなコイツ。
あーでも俺も昼寝したいかも…。
なんて呑気にダラける、平和で穏やかなオフの日の昼下がり。
だけど、次の瞬間。
『オーガニズムとか言うんだぜ?(笑)もう会場ドン引きで「んぎゃああぁあ!!」
……。
しまった。
つい手が滑って、天然でアホなアイツの鎖骨を撫でてしまった。
もちろん、今の汚い奇声は天然で(中略)の悲鳴。
『か、かめ?!どーした??何かあったのか?!』
「…いや、なんでもねー…ありません。実は友人からデカイ犬を預かっておりまして…えぇ。今のはただのメシの催促です。そんな訳で切りますね?では」
電話越しに心配して慌てる先輩はこの際無視して、一気にまくし立てるように言ってから通話を切った。
さて、今しがた目の前で飛び起きたこのアホ犬を、これからどうしてくれようか……?
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