プロローグ

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新月の深夜、車高を落としたブラックメタリックの大型スクーターが、牛若丸と弁慶の戦いで有名な五条大橋を京都タワー方面から琵琶湖方面に渡っている。左には親鸞聖人の墓、大谷本廟がある。その上には照明で照らされた清水寺の参門が少し見える。 車体と同じ色のフルフェースヘルメットとの後から黄金色の長い髪が、鴨川にキラキラ反射する。 ヘルメットは特注なのか、通常より二回りも小さく、顔より少し大きい。黒のジーパンに黒のジャンパーをまとい。すべてがブラックで統一されている。風防もブラックで顔が見えないが中の顔はきりっとした美人を想像させる。 細く長いしなやかな足が、シートをしっかりと挟み込み、胸はふくよかなのか、ジャンパーが異常に膨れ、それに相反して腰が異常にくびれて見える。 たった今、バイクのモーターショーから抜け出して来たようにしか見えない。 背中には、厚手の皮で出来た重たそうなバックパックを背負っている。 後からは無数のパトカーが、大音響のサイレントとパトライトを回して、静寂な京の街を騒ぎ立てている。 五条大橋を渡ったスクーターは、スーと東山の暗闇に亡霊の様に消えた。 パトカーはそのまま琵琶湖方面に進む。 新月の夜に京の街を颯爽と現れる怪盗ブラックローズが現れたのだ。 次の日の新聞には「怪盗ブラックローズ、京に現る!!。悪徳闇金業者から金塊を奪う!金庫に一輪の黒バラ……」と一面に載っていた。
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