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●バー烏丸●
「はい、どうぞ」
ヒロは自慢の焼き飯を、薮田の前に差し出した。
「うまそうやないか」
ほっかほっかに仕上がった焼き飯を薮田は見ている。
スプーンで一口、二口食べた。
「うまい!」
樹里が「マスターは、何でも上手なんですね」
「何でも……」
お付の刑事が聞き返す。
ヒロが「あのー、お名前を聞いてないのですが……」
「ジュンでお願いします」
「なんかその名前……」
隣の薮田が睨む。
「順二のジュンです」
「ハイカラな名前つけるな」
薮田が最後の一口を食べた。
「ん……」
薮田の舌に何かが纏わりついている。手でそれを取って。
「コラー、なんや、お前んとこは、髪の毛を隠し味に使うんかー!」
薮田がビアジョッキを握って、ヒロに投げつけた。それが、ヒロの頭に直撃した。
ガチャン!
ビアジョッキが粉々に割れた。ヒロの頭から、血が噴出する。
「何するの!」
樹里が中国語なまりで叫ぶ。
「お前中国人か!このばいた(売女)!」
樹里がカウンターに慌ててはいる。
「大丈夫や。心配すんな……」
ヒロは、おしぼりで頭を押さえている。
「ヒロ!こっち来い」
ヒロが顔中血だらけで薮田に向いた。
「お前は、俺に何をしようとしとるんかー!」
「いいえ何も……」
樹里がカウンターから出た。手には何かが握られている。
薮田がもう一つのビアジョッキを握った。ヒロは右手で顔をカバーした。
グサ!
薮田の喉から、光ものがキラッと光った。
「うっ!」
薮田の口から、血がドロドロと噴出する。
樹里が後から薮田ののどを一突きにしたのだ。
「樹里!」
それを見た隣の警官が胸のホルスターから銃を抜こうとしている。
ヒロが咄嗟に目の下にある出刃包丁を刑事に投げた。それが、頭に刺さり、刑事は後にバッタリと倒れた。
「樹里、鍵を閉めろ!」
樹里が出入り口の鍵をガチャと閉めた。
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