握り飯を食べる妖怪、味噌汁を啜る妖怪

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 幻想郷は元から結界で隔離されていた訳ではない。単に「東の国にある辺境の地」がそう呼ばれていただけであった。 ――幻想郷には妖怪が多く、ここに迷い込んだら最後、妖怪に喰われてしまうと恐れられていたため、普通の人間は幻想郷に近づかなかった。  しかし、中には妖怪退治の為に幻想郷へ住み着く人間もいた。自ら死線へ出向く者も少なからず存在した、ということだ。  そして月日は流れ、人間達は文明を発展させその数、勢力を増幅させていく。  五百年前、人間の勢力が増すことで幻想郷のバランスが崩れることを憂いた妖怪の賢者、八雲紫は「妖怪拡張計画」を立案、実行し、“幻と実体の境界”を張る。  そして、妖怪の勢力を他から取り込むことでバランスを保った。  やがて明治時代になると、近代文明の発展とともに非科学的な事象は「迷信」として世の中から排除されていく。  幻想郷はそこに住み着いた妖怪達や一部の人間達の末裔と共に、強力な結界の中で生きる道を進むことになる。  そして幻想郷の存在は、人々から忘れ去られていった。
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