序章

2/2
前へ
/11ページ
次へ
西暦2082年。 地球温暖化の進行でさまざまな異常気象を引き起こし、地球は荒れ始めてきた。 人類に壊滅的な打撃を与え、今日に至るまでの発端である《アスモニア》という劇毒物質を含有する鉱石が発見されたのもこの年である。 『アスモニア』は、当時最も蔓延するのを恐れられていた新生の感染性ガン細胞の進行を防ぎ、フグ毒で有名な『テトロトキシン』の数万倍も強い毒素で殺す作用があると報じられて貴重な物質として重宝されてきた。 世界各地で大々的な採掘が始まり、『アスモニア』は瞬く間に世界中に広まっていった。 医学者や研究者はその強烈な毒素をなんとかして人体に影響がないようにするために、莫大な費用を費やして研究に打ち込み始めた。 しかし、それからが恐怖の始まりだった。 西暦2088年。 『アスモニア』を採掘するために向かった採掘隊から連絡が途絶えた。 研究者たちが不審に思い、国に連絡する。 国はその事態を無視し、事件はそこで忘れ去れた。 翌年には近辺に住む住人や動物達が居なくなり、だんだんと被害が増え始めていく。 国はそれを重く見て採掘場に軍隊を配備する。 すると得体の知れない生物が次々と現れて兵士達を襲い、貪り食い始めた。 彼らは定められた形状を持たず、ぬるぬるとした粘膜を持ち、不規則に形を変えて地面を這うアメーバのような謎の生命体。 彼らも体内に『アスモニア』を含有し、すさまじい毒素を持つ。 それ故に彼らは体がアスモニア特有の赤紫色である。 ちなみに人間や動物・植物の成分、またはありとあらゆるエネルギーを体外から直接摂取しなければならず、手当たり次第生きとし生けるものを貪り食らう。 これが人類を絶滅する寸前まで追いやった生命体『ゾルバ』である。 『ゾルバ』の登場により、動物や植物は全滅して残るは知性と文化がある人間のみとなった。 尚も脅威を振るい続ける『ゾルバ』に人類は最後の砦を築いて人類の存亡を懸けた決死の反撃を試みる。 そして西暦2095年。 要塞型学園都市『アブゾルトニューバ』を建設して生き延びることに成功した。 しかし、ゾルバの猛威は依然として留まることはなく、今の世代へと繋がっている。 これは自分達の命や家族・仲間・恩師を犠牲にしてゾルバに立ち向かう少年兵小隊『第7特殊強襲隊』の隊長・レヴァンの葛藤と苦悩、生きざまを綴ったものである。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加