Ⅰ,英雄と謳われた道化師

2/9
前へ
/11ページ
次へ
空は本当に青いのだろうか? 実際のところ、それが本当かなんて僕には分からない。 何せ、上を見上げれば空はあるがあれはニセモノだ。 このドームの内部に貼られたシートに青空の様子を投影しているだけの紛い物。 幼い頃から見てきてるが、どうもイマイチな感じだ。 どうせなら、本当に高い、手を伸ばしても向こうまで届かないような透き通る青空を見て見たい。 最近、そう思うようになってきた。 僕の名前はレヴァン・スティルフィン。 この学園都市を守る兵士達の隊長であり、学業に励む学生でもある。 普段から人に対して優しい僕は、皆からとても慕われている。 最近では隊長に昇格してすぐに"ゾルバ最多討伐勲章"と"銀剣英雄勲章"を軍から表彰されたばかりだ。 とりあえず軍や学園都市の中では英雄的な存在になっているらしい。 大変申し訳ないが身に覚えはない。 そんなこんなで良い人たちに恵まれ、今の世知辛い世の中を生きてる。 そんな自分が幸せだな、なんて感じるようになってきた。 「隊長~…全く、どこにいるのよ…」 どこからか僕を呼ぶ声が聞こえた。 僕はゆっくりと体を起こす。 僕が寝ていたのは二階建ての建物の屋上からせり出した部分で人ひとりが寝れるスペースだ。 30㎝ほど下に下がっているため、当然屋上の入口から見ただけでは見付からない。 いつの間にか、ここは僕の昼寝のスペースになっていた。 やれやれと立ち上がるとフェンスを越えて入口へと向かう。 すると屋上から降りる階段の入口の扉が開き、赤色の軍服を来た女の子が出てくる。 身長は150㎝ぐらいで細身、とても軍人とは思えないほど華奢な体つきの彼女。 茶髪のポニーテールを揺らしながら、辺りをキョロキョロと見回す。 そして僕の存在に気が付き、声を上げる。 「た、隊長!?いつからこんなところにいたんですか!?」 「あぁ。さっきからいたよ。こんなところに居て悪いのか?」 僕は意地悪そうに彼女へ言う。 彼女は恥ずかしそうに頬を赤く染めて俯いた。 彼女の名前はカレン・アルファード。 昔から一緒に過ごしてきた幼馴染みだ。 可愛い容姿には似合わず、気が強くて負けず嫌い。 それが幸を征してか、何の苦もなく今まで続けて来れたんだと僕は思う。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加