Ⅰ,英雄と謳われた道化師

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結局、有名人である僕とは外食に行けずに本部の中にある食堂で昼食を取ることになった。 だだっ広い食堂の一番奥にある長テーブルの椅子に座る僕。 僕の真正面の椅子に座るカレン。 カレンは相変わらず、ご機嫌斜めのご様子だ。 先ほどのことをまだ引き摺っているのだろう。 彼女はさっき、上層部へ外出届を提出したら受理されなかったと言う。 今後もゾルバの侵攻が激しくなると予想したためだろう。 軍は戦闘要員の半分以上を僕ら『第7特殊強襲隊』で補っているようなもので、迂闊に外出させたらまともに戦える兵士が居なくなってしまう。 無論、"ゾルバ最多討伐勲章"と銀剣英雄勲章"を授かり、軍の中でも実力者である僕と外出となればこんな状況の軍部から外出できないだろう。 "ゾルバ最多討伐勲章" 文字通り『年間で最も多くのゾルバを討伐した者』に授けられる勲章で、僕みたいな一端の小隊隊長が貰える代物ではない。 僕は10歳の時に兵士になり、今に至るまで七年間でなんと100000体以上のゾルバを倒して来たらしい。 これは軍の過去最多討伐記録として認定され、歴代1位になった。 "銀剣英雄勲章" これは毎年行われているもので、その年ごとに戦線で最も活躍した者に授けられる勲章である。 僕は13歳の時と14歳の時に授けられ、今回は実に三度目の授与となる。 幼い頃から活躍していた僕は恐らく市民にとても人気が高いだろう。 軍の中では僕を師と慕う兵士が急増、一時期、軍法会議ものになったこともあった。 そんなこんなで今の自分に至ったというわけだ。 昔のことをしみじみ思い出していると、注文していた親子丼が出来上がったらしい。 可愛らしいウェイターの女の子が、丁寧に運んできてくれた。
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