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「ね、夏休み中のバイトは楽しかった?」
愛花の質問で頭の中に浮かんできたのは、いつも悦徳が着ていたパッダの着ぐるみ姿。
「うん、すごく楽しかったよ」
その姿を思い出すとクスリと笑ってしまう。
「なになに~そんなに楽しかったの? 確か江坂ママの子供さんとバイトしたのよね?」
「そうだよ。えっちゃんっていうの」
頭の中にいたパッダ姿の悦徳が消える。
次に頭の中に浮かんできたのは、ストーカー男性から自分を守ってくれた時の男らしい悦徳の姿だ。
「えっちゃんは……私にとってのヒーローだったんだ」
遠くを見ながらほほえんでいる歩花の姿を見て、愛花は笑う。人差し指で二の腕をつついてきた。
「なによ歩花~何があったかお母さんに話しなさ~い」
「え~秘密だよ~」
二人の明るい声が小さなアパートで響き渡った。
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