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「悦徳、気付いてないみたいだね」
後ろから聞こえる一貴の声。歩花は一貴の方を振り返った。
夕日はほぼ沈み、辺りは薄暗くなってきている。そんな中でも、一貴が悲しそうな目で微笑んでいるのが見えた。
「……うん」
二人は、ゆっくりと歩き出す。
アスファルトの道も、青かった空も、いつも見ている住宅街の風景も……徐々に暗闇に染まっていっていく。
まだ時間はそんなに遅くないはずなのに、車も人も通っていない。ずっと静か。その中で、歩花と一貴の足音だけが聞こえる。
「……ごめん」
無言で歩いていると、急に一貴が口を開いた。
「え?」
一貴は、横顔を向けたまま。アスファルトを見つめ歩き続けている。
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