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ヨウジ
「あっちゃちゃちゃ~、ナルミくん!ハエってなんだよ!蝿って!」
ナルミ
「だってハエはハエじゃないっすか…。」
ヨウジ
「まったく…。これだからトウシロは…。いい?僕らは"キイロショウジョウバエ"って言うありがたぁ~い蝿なのだよ。」
混雑する思考を誰が止めてくれようか、キイロショウジョウバエとなった自分を、漠然とした現実を今から未来へと時間を歩む自分は受け止めて行くことができるのであろうか。
ヨウジ
「ナルミくんは寝ちゃってたからな…何をするべきかは、おれに任せてくれよ!」
自信を身に纏ったような、雄蝿は説明は後だ、と言うかのようにして無限に広がる空へと飛び立って行った。
僕は、脊髄反射的に追いかけて行く。
ヨウジ
「あの建物が見えるかい?」
数分飛び続けていると、どうやら目的の建物に到着したようである。
雄蝿いわく、タマシロと言う男はあの建物の最深部にいるらしく、そう簡単に辿り着くことが出来ないらしい。
しかも、僕らにはそう沢山の時間が残されてはいないのである。
キイロショウジョウバエの寿命は、人間の手によって育てられても60日、これは幼虫の時期も入っている。
約25℃で卵から孵化した場合、成虫になるまで約220時間、約9日間。
でもそれは、人工的に飼育されている場合に限り、僕らの置かされている状況はあまりにも過酷であった。
だが、悪いことばかりではない、現世に転生した時点で成虫だった僕らは、少なくとも幼虫の時期分だけ、長く生存できるからである。
全てのソースは、この雄蝿からなので信憑性に欠けるが、今の僕には無いよりマシな情報と言えよう。
ヨウジ
「言い忘れたことがあった!」
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