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†
その頃、タワーから離れた大きな廃工場の近くでは……
「疑問を口にします! あのような情報はなかった。あの少女は記録書だけを持ち、魔具は持っていないと。第一、魔具もコードも使える人間などあってはならない!」
そのような愚痴っぽい声が工場内に響く。先ほどの黒づくめの男だ。
「これは情報不足の──ッ!」
ジャリという地面を踏む音がした。ここはとっくに捨てられ誰もいないはず。いてもゴロツキくらいだ。
「だ、誰ですか!?」
だが、無性にこの男には不安に思えた。なにか恐ろしいものが近付いてきているような……
「お前に名乗る名はねえよ……」
靴音と共に月明かりに写し出されたのは、木刀をバチバチと光る木刀を持った金髪の美少女だった。
「ユイを傷付けた罪……その身で払ってもらう」
「ま、待っ──!?」
「待つかよ……死ね」
金色に光る刃が今まさに振り下ろされた。絶叫に近い断末魔を残して。
「ユイを傷付けるなら……」
月明かりの中、虚ろな瞳のまま何か呟く。
「誰であっても容赦はしない」
真っ赤な衣服のまま、顔を手の甲で拭うとニヤリと不敵に笑った。
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