我輩は猫である

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しばらくあるくと町に出る。とても人が多く、まだまだ子供である我輩は出ていったら踏み潰されるのではないか、蹴られるのではないか、と恐怖を覚えた。 そんな中、我輩は一匹の野良猫を見た。 白、黒、茶。三色の三毛猫がサンマをくわえて人々の間をすり抜けるように疾駆している。 後ろではオヤジが「この泥棒猫が~!」と叫んでいる。なるほど、そこの魚屋から盗んできたのだな。 盗みはよくない。そう注意しようと彼を見た。すると、見えなかった反対側の目には傷跡があり歴戦の戦士のような風格が漂っていた。 我輩はすっかり萎縮し、声をかけることすら叶わなかった。 すでに見失っているはずの魚屋の店主はしつこく三色の毛が見えないかと探している。 しかし、やがて諦めたのか肩を多少落として去っていった。
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