恋をする、君の瞳に恋をした

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「どうしたんだよ、急に」 トキワの心境の変化は有難かったが、何がそうさせたのかが不可解だった。 だって、丸三年。 言い続けてダメだったことが、急に覆されたのだ。 疑問にも思う。 「別に、入学祝いだよ」 トキワは、そう言って笑った。 だけど、僕にはわかった。 これは嘘だ。 いつもはなんでもない嘘をぽんぽん吐くくせに、重要なことは嘘を吐けない。 この三年で、それくらいのことは理解していた。 「嘘だろ」 「はは、そう」 あっさり認めやがった。 何も言わず、トキワの次の言葉を待っていると、奴は諦めたように肩を竦めてこう言った。 「あいつはいつか誰かと幸せになって、どっか行っちまうかもしれない。 だけど俺はそんなの耐えらんねーから、俺が選んだ男に渡して…俺の庭で飼い殺すんだ」 トキワの瞳が、不意に色を深くし、奥でギラリと光った。 初めて見るその色に、僕は唖然とした。 僕が初めて触れる、狂気だったからだ。 「え…」 やっと絞り出した声は掠れて、首筋を汗が伝った。 「そんな顔すんなよ」 緊張を解いて、トキワが笑った。 僕は少しホッとして、息を吐いた。 「に、庭って…?」 「庭だよ。 俺の知ってる、俺を裏切らない庭。 ミクロを絶対逃がしたりしない、優秀な庭」 トキワは煙草を咥え、火をつけた。 口調は軽いが、冗談で言ってるわけじゃないのがわかる。 僕は生唾を飲み込んだ。 僕はとっくに知っていた。 トキワもミクロちゃんを愛してるってこと。 それに気付かないふりをして、散々会わせろと言ってきた。 でも、それに罪悪感などは感じない。 僕だって真剣に彼女に恋してる。 だけど、こんな狂気じみた愛なんて。 僕は、トキワを怖いと思った。
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