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それから、トキワは最近発覚した持病の話をした。
血が固まらない病気。
現段階では健康に支障はないが、大怪我をしたり、何らかの病気で手術をしなければならなくなった時に厄介だと言う。
「こういうのもあるからさ、尚更ミクロと恋愛してる場合じゃないわけよ」
トキワは気を取り直すように、新しい煙草に火をつける。
「でも、健康に支障ないんなら…」
「お前なぁ。
ミクロに会いたいのか、会いたくねぇのか、どっちだよ」
トキワは呆れ顔で、僕を見る。
「そりゃ、会いたいよ。
会いたいけど、想いあってるのに…」
「そうだよ、想いあってんだよ。
だから、ミクロをお前に託すんだよ。
ちゃんと、飼い慣らせよ。
絶対、逃げたりしないように」
また、瞳に狂気が宿る。
その夜の酒は、酷く不味かった。
僕では到底手に入れられないような、強すぎる絆と想いを見せつけられて、途方に暮れた。
僕に庭が務まるのか。
いや、それよりも、そんなことをして誰が幸せになるんだ。
誰も幸せにならないんじゃないか。
ミクロちゃんの気持ちは?
置いてけぼりにしている、ミクロちゃんの気持ちはどうなるんだ。
だけど僕はノーと言えなかった。
トキワの目が狂気を孕む度に、脆くなっていくのを見ていたら、何も言えなくなった。
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