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二回目は、ただの偶然だった。
母親の頼みで、家から数駅離れたところにある大型のデパートに買い出しに行った。
買い出しを終え、デパートついでに画材を見て帰ろうと寄り道をした先に二人がいた。
文具店の向かいのスポーツウォッチ屋。
画材の入った大きな袋を一つずつ下げて、その兄妹は、まるでドラマから抜け出てきたみたいに絵になっていた。
二人は顔を寄せ合って、ウィンドウに飾られた時計を見ている。
それだけなのに、僕は金縛りにでもあったみたいに動けなくなった。
近寄れない、何らかのバリアみたいなものを感じた。
世界がまるで、二人だけで完結しているみたいな、そんな。
そこに、店員と思しき男性がやってきて、セールストークを始める。
二人の世界が壊れた。
壊れたことに安心した。
あのまま見ていたら、僕は泣いていたかもしれない。
悲しくさせるほど、切ない目。
彼女の目は、優しいのに切なすぎた。
愛しいものを見つめるその目。
僕は逃げるようにそこから立ち去った。
だって、あんなの。
おかしいじゃないか、だって。
兄妹なんだろう?
動揺していた。
だけど、動揺の中身には確信があった。
嫉妬、羨望、焦燥。
そういった醜いどろどろした感情が、僕を飲み込んでいた。
そして、その醜い感情の名は恋だった。
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