21人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日から毎日、トキワと顔を合わせる度に、妹に会わせてくれと頼んだ。
なんだよ。急に。
トキワはそう言って、目を丸くしたが、絶対にイエスとは言わなかった。
「あいつはトクベツだから、だめ」
「何が、何が特別なんだよ」
「存在が」
「え?」
「あいつは天才なんだよ。誰にも触らせねぇ。
俺の服と、あいつの絵があれば世界だって夢じゃねぇだろ?
だから、あいつに色恋なんてさせてらんねぇの」
「自分は何人も彼女いるくせに」
「俺は器用だからいーの。あいつはダメだ。絵以外は恐ろしく不器用で」
「でも、会いたい」
「だから、ダメだって」
こんな会話を毎日、何度も繰り返した。
こんな調子じゃ、受験に身が入らないなと漠然と思っていた。
思っていながらやめられず、案の定、僕は浪人する羽目になった。
二浪して入ったのは、某国立芸大。
二浪でも良い方だった。
僕は二十歳にして、やっと大学生になった。
最初のコメントを投稿しよう!