恋をする、君の瞳に恋をした

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次の日から毎日、トキワと顔を合わせる度に、妹に会わせてくれと頼んだ。 なんだよ。急に。 トキワはそう言って、目を丸くしたが、絶対にイエスとは言わなかった。 「あいつはトクベツだから、だめ」 「何が、何が特別なんだよ」 「存在が」 「え?」 「あいつは天才なんだよ。誰にも触らせねぇ。 俺の服と、あいつの絵があれば世界だって夢じゃねぇだろ? だから、あいつに色恋なんてさせてらんねぇの」 「自分は何人も彼女いるくせに」 「俺は器用だからいーの。あいつはダメだ。絵以外は恐ろしく不器用で」 「でも、会いたい」 「だから、ダメだって」 こんな会話を毎日、何度も繰り返した。 こんな調子じゃ、受験に身が入らないなと漠然と思っていた。 思っていながらやめられず、案の定、僕は浪人する羽目になった。 二浪して入ったのは、某国立芸大。 二浪でも良い方だった。 僕は二十歳にして、やっと大学生になった。
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