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「うわっ…寒っ…」
マンションから出た瞬間、急激な寒気が俺を襲う。
心も、体も、冷える。
「うーわ雪降ってきたやん」
ポケットに手を突っ込み、来た道を戻る。
「歩いて家まで行くん、時間かかるやろうな」
まぁ、しゃーないな。
深入りしやんくて、良かったわ。
マンションの前の通りを、向かいからサラリーマン風の男が走って来た。
「あいつっ…めぐみの奴っ!今日こそ浮気現場を押さえてやるっ…!」
ブツブツ言いながら男は俺の横を通り過ぎて行った。
「…俺は関係ないで」
今回は運が悪かったんや。
俺は、俺だけを見てくれる子がいい。
俺を見てくれる相手じゃなきゃ、意味ないねん。
それだけや…
北風が吹き付ける道を、俺は真直ぐ歩いて帰った。
初対面での誘いに乗ろうとした自分が恥ずかしかったし、俺だけを見てくれる気がしてたから結構ショックやったけど、そんな痛みはきっと明日にはなくなってるんやろう。
そう考えながら家に帰った。
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