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「ありがとうございましたー」
自動ドアを通り過ぎて真冬の空気に立ち向かう。
『お酒もうないよ~?』
『大樹お前買ってこい』
『はぁ!?何で俺が!?』
『一番飲んでたん大ちゃんやんか。なぁ、由佳?』
『うん』
「……」
あいつら…押しつけやがって…
クリスマスイブの夜に何で一人でコンビニに酒買いに来やなあかんのや。
周りはカップルばっか。
雪も降ってる。
缶チューハイとビールは重いんやで?
もう一人くらい来いっつーの!
「あーあ、どっかに運命の出会い転がってへんかなぁ?……そんなうまい話あるわけないよな」
虚しい気持ちを噛み潰すようにガムを噛む。
『大ちゃん、ずっと一緒にいようね?』
「奈津子…」
一瞬あいつの顔が浮かんだけど、すぐに追い払った。
「…」
繋いだ手の温もりをもう思い出されへんのは、空気が冷たいからや。
何となく目に涙が溜まるのは、風が冷たいから。
並木道のしょぼいイルミネーションを直視できへんのは、降って来る雪が冷たいから。
「………はよ戻ろ……あれ?」
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