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一室の部屋で、声を潜め話す2人の男。
「…100万円払うので、どうか見逃してくれませんか…」
肩を竦め腰の低い様子の男は、深々と頭を下げ、ちろりと初老男性の顔色を窺う。
「100万では足らん! 1000万だ!」
「いっ1000万!?」
初老の言葉に、男は顔を青ざめた。
「バラされても…いいのか?」
ドス効いた男の声に、男は渋々首を縦に振った。
―――
その様子を少し離れた屋上で、眺めている女がいた。
「あの人ですか…」
真夏の炎天下、女のか細い声は蝉の声によってかき消された。
懐から一枚の紙を出す。
写真には、先程の初老男性の顔があった。
深く刻まれた眉間の皺。
白髪混じりの髪。
鋭い眼光。
政治業界の裏側を牛耳る、金に飢えた男。彼に恨み持つ者も、数十人といる。
チャキ……
彼女は小振りのピストルを出し、構えた。
…狙うは、心臓ですね。
狙いを定めると、何の躊躇いもなく引き金を引いた。
パァーンッ
銃口から飛び出た鉛は、窓ガラスを突き破り、導かれるように男の左胸へと潜っていった。
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