序章

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「うっ…」 男は目を剥き出しにし、もがく事なく床へ横たわった。 「あ、あ…あぁ…!!」 傍で見ていた男は腰を抜かし、床に這いずる。 そして、なんとかドアに辿り着き、部屋から飛び出ていった。 その様子を女は、静かに見ていた。 男の部屋からビルの屋上までの距離は、およそ数10メートル。 そんな所から女は、一発で心臓を貫いた。 並みの人間なら、到底できない神業。 しかし、彼女には千里眼という能力を持ち合わせているため、簡単な事であった。 男の部屋には、たくさんの警備員がかき着け、騒がしくなっていた。 女はその様子を一瞥し、その場を去ろうと踵を返した時だった。 ――刹那 ビュオッ… 「!?」 凄まじい風が吹き、華奢な体の女は飛んだ。 そして、かくっと無重力状態に近い感覚がした。 景色が流れていく。 地面が次第に近づいてくる。 下には、たくさんの車が行き来していた。 女は抵抗せず、静かに目を閉じた。
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