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そんな本があんのかよ……
「その本に俺の事載ってたか?」
「いや、ロマノ少佐は載ってなかったですね」
ガーン
思わずそんな効果音が聞こえそうになった。
それぐらい少佐はあからさまに落ち込んだ。
「なんでウェルキンが載ってて……俺が……俺が載ってないんだ……」
なんか、もう、めんどくさいなこの人……
「あっ!カーター、エリがレディルームで待ってんだろ?早く行かねぇと掛け金が500ドル位になるぞ」
「冗談ですよね?」
「いんや、こりゃマジだ」
俺がそう言うとカーターは血相変えてレディルームに飛んでいった。
「少佐、いつまで落ち込んですか?」
少佐はまだ落ち込んでいる。
「だってよぉ」
まったく、子供か?この人は……
「ほら、あれですよ。親父は死んだから載ったのであって、少佐は生きてんですから」
「なるほど」
立ち直んの速っ!
「ね?生きてるのが一番ですよ。何時も言ってるじゃないですか“機体は消耗品、乗員が生還すれば大勝利”って」
「“機体は消耗品、乗員が生還すれば大勝利“か……それな、ウェルキンが死んだときからバートレットが言い出したんだ」
「バートレット大尉か……懐かしいな」
確か、サンド島基地に居るんだっけか?
「また、戦争になるんですかね?」
俺の呟きを聞いたのか、少佐が真面目モードになった。
「例の不明機か?」
「えぇ、あの不明機のパイロット、最初から俺たちとやり合うつもりだったように思うんです」
あの時の敵機は俺たちが捕捉したときに取り乱した様子がなかった。
あれは間違えなく、意図して領空を侵犯していた。
「うーむ、理由は分からんが、ユークの連中がこっちとやり合おうとしてんのは確かだな」
少佐は、通路の壁に寄り掛かりながら話した。
「だが、戦争になるかどうかは政治の話だ。まぁ、ハーリング大統領とニカノール首相は融和派だからな、そう簡単に開戦するとは思えないな」
「そうだと良いんですが……」
「おっと!そろそろ訓練飛行の時間か、それじゃあな」
少佐はそう言うとアロー隊のレディルームに向かって行った。
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