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ポーン……‥‥
古びた田舎の学校。
音楽室に響くピアノの単音。
その音が消えていくと、周りの音を掻き消すかの様に鳴きだす蝉の声。
音楽室には一人の少女が陽炎に滲んでいる。
椅子にも座らずに、ピアノの前に立ち、右手の人差し指一本で鍵盤を沈めている。
彼女の頬には涙が流れ、落ちた涙はすっかり古びた鍵盤を湿らせていく。
声も出さずに、ただ静かに泣く彼女。
ピアノの余韻。
鬱陶しいほどの蝉の声。
見ているだけで時が止まりそうな彼女の世界に…
───俺は足を踏み入れた。
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