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「だってさぁ」
ボクは彼と同じように持っていた紙飛行機に、視線を落とした。先生が好きな色でと言ったから、ボクのは薄い水色。ご機嫌な空の色だ。人差し指と親指でつかんで、力を込めずに空に向かって投げる。それは、キルヒアイスの持つのと同じ色をしているにも関わらず、そのまま真っ逆さまに落ちていった。
ボクの紙飛行機は、飛ばない。先生は、飛ぶ意思がないからだって言う。ボクは、ちゃんと飛んで欲しいと思っているのに。みんなと同じでなければ、いけないっていうのに。
「オレは別に、今のままでも良いけどな」
「ボクはヤだよ」
先生は、勇気を持てとボクに言う。勇気と強い思いがないから出来ないんだって、言う。だけどボクは、先生には言わないけれどその瞬間思うのだ。
ボクには希望なんてないんだって。
だからきっとボクは、どうしようもないほど魔導士に向いていない人間なのだろう。はやく諦めて、家に帰った方がいいのかもしれない。厄介者だって罵られても、家にいる方が良いのかも知れない。
「お前が嫌でも、オレは良いの」
だけどそうしないのは、此処にキルヒアイスがいるからだ。もしもボクに希望がもてるのだとすれば。それを形として表すことが出来るのだとしたら。
きっとそれは、彼という存在なのだろう
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