非平凡的幸福

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 慣れないショートソードを片手に持って、家を出たのはそれほど前のことではない。少なくとも、日数的にはあまり経っていない。ただ、もうそれが何ヶ月も前のことのような気だけはしているのだけれど。此処に来てから、毎日時間が流れるのが酷く遅い。やらなければいけないことがとても多いから助かっていると言えなくもないが、どうも時の流れに体がついていってくれないようだった。早くお金を稼がなければと、気が急いている所為だろうか。  実家からだいぶ離れたこの都会へやってきたのは、私の我が儘のためだった。狭い田舎じゃなくて、もっと広い場所へ行ってみたいという気持ちが生まれたから。両親を毎日説得して、月末に必ず手紙を送ることを条件に承諾を貰った。  あの村で出来ることと言えば、年頃になって結婚して、子供を産んで育てるだけ。それまでは花嫁修業だとかで、料理やら洗濯やら掃除やらの家事の手伝いをさせられるのだろう。私の母が、そうだったから。私はどうしてもそれが嫌だった。「女の子」だからと、制限されることがどうしても納得できなかったのだ。  だから今、こうして私はこの大都会「ウルヴァーノ」にいる。生活はとても楽なものではなかったけれど、村にいた頃よりはずっと楽しい。村の生活は村の生活で楽しかったし、私のしていることが親不孝以外の何でもないことは知っているけれど、此処の生活はそれを忘れてしまうぐらいに楽しかった。こんなに楽しいのだと知っていたら、きっと15歳になる前から来ようとしていただろう。流石に、その頃ならもっと強く親に反対されていたことだろうが。 「カーナ、いる?」
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