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こうして、物語はプロローグへとさかのぼる。
目の前にいる金色の髪の少女は、二神の方をチラッと見た後、再び男の方へと振り返る。
「あなたは“ノーバディ”ね」
(ノーバディ、……?)
「だとしたら何だ? 貴様には関係ないと思うが、俺の楽しみを邪魔しないでほしいね」
男は面倒くさそうに頭をポリポリと掻く。
「ま、邪魔するってんなら……殺すだけだけど」
その言葉を吐いた刹那、男の姿が一瞬消失した。
そして、次に男の姿を見つけたのは少女の後ろ。
具現化された刀は避ける隙すら与えない速さで少女目掛けて突き進む。
武器を持たない少女。
二神は危ない、と思い立ち上がった。
しかし少女は二神の予想とは裏腹に、トランポリンに乗って跳ねたようにスッと空中にジャンプし、男の攻撃を避けた。
そして少女は唱えた。
「断空の閃……」
何かの呪文だろう。
さっき、男の腕を切断したときのように透明に近い白色の刃状の攻撃が男の方へ猛スピードで飛んでいく。
「………!?」
間一髪、男は顔を横に動かし直撃を避けた。
それでも、その攻撃は男の頬に赤い血液を垂らすほどの切り傷を与えた。
「あぁーあ、ただの“狩り”にここまで手こずるとは思わなかった……」
さっきと同じように俯きながらポリポリと頭を掻く。
一瞬見えた男の目、二神の背中に嫌な汗が垂れた。
足が震えた。手が震えた。体全体が震えた。
危ない……。
二神の中にある第六感が今までにないほど働く。
「消え失せろ……」
ポツリ、と男は呟く。
「………!?」
「な、なんだ……!?」
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