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静寂と闇の中での唯一の光は、ただひたすらキーボードを打つ音を発していた。
自分の部屋でプログラムを打っている時にカタカタという音がこんなに騒々しい音だと思ったことは一度もなかった。
俺はそんな雑音が途中から全く気にならなくなるほど、目の前の作業に没頭していた。
ふと腕時計に目を配ると、時計はすでに深夜の2時を回っていた。
…あと2時間もあれば終わるな。
となると家に帰るのは4時か。
オヤジが起きるまでには帰りたいな…。
だとすれば、今帰るのがベスト。
…などと頭に思い浮かんだが、すぐに思い止まりパソコン画面に目を向けた。
だめだ。俺は今日中にこのプログラムを完璧にしなければならない。
入念に確認し、それは一つの芸術とも呼べるようなプログラムになっていた。
それでも足りない。
まだ足りない。
確認しつくしてもし足りなかった。
決行は明日…。
それだけは揺るぎなかった。
朝陽が昇るまでには、もう手を加えることのないように。
明日の午後にはこの計画が世界中に知れ渡る。
その長を司る自分にとっては決して悪くない気分だ。
だからこそ失敗は絶対に許されない…。
有能な面子は揃えた。
ついに世界というものに足を踏み入れる。
それに見合う実力もある、俺なら可能だ。
あとは…牌をツモるだけ。
「俺は世界を…」
キーボードに真向かい、誰もいない部屋で俺はひとり呟いた。
真っ黒な笑みを隠せなかった。…一人なのだから隠す相手もいないのだが
夢が叶う。
こんなにも早くに実現するとは、な。
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