プロローグ

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   何かを見据える瞳は、いつもどこか見えないものを凝視していた。  力強いのに。  どおかぽっかりと穴があいてるみたいに、虚無感たっぷりで。  それなのに、じっと見てるあたしの方が悲しくなるくらい、寂しげな色。  あたしとお兄ちゃんとは違う、真っ黒な宝石のような瞳に浮かぶ色彩。  その前髪に隠れた切れ長の目に、ほんの僅か優しく細められた黒曜石に映された時、心臓がひっくりかえりそうなくらいに嬉しかった。  その凍えるように冷えきったその手をね、もっと柔らかく安心させてあげたいって、握り締めた。  ずっとずっと、ここで。  この距離に、隣に一緒にいたいって思ってたこと。  おんなじ思いだった、って。  そう信じてても――いいよね? *
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