プロローグ

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   初めて出会ったのは保育園だった。  お父さんの転勤と、お母さんが始めた短時間のパート勤務のため、あたしたちは近くの保育園に入園することになったのだ。  お兄ちゃんとは一緒だけど。  お母さんと離れることが不安だった、初めての共同生活。  怖くて怖くてたまらなかったはずの感情を一気に吹き飛ばしてくれたのは、あなたとの出会いで。  こう、身体にびびびって。  ちょっと前に水族館で観た、大きなでんき鰻に撃たれたみたいな衝撃が身体を包んだの。  途端に動き出した、あたしの特別な時間。  とくとくとく。  刻み始める、今まで感じたことがない鼓動の音、速さ、振動。  新しい教室だって、お母さんだって、お兄ちゃんだって。  優しそうな先生だって。  全てが霞みにかかってしまったかのように、薄い薄い存在になって……。  奥に座っていた彼だけが、特別に輝いて見えたんだ。 *
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