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僕はただ、声にならない嘆きを奏で、断腸の思いを抱き、自己嫌悪をして、彼女の思い出に対して涙を流す。そんな何にもならない様な事しか出来なかった。
月の光。星の光。街灯の光。それらが僕を優しく包み込むけれど、それはなおさら僕を悲しみの渦へと導いていくだけだ。
今、僕が求めているモノは優しさなんかでも叱咤なんかでも、ましては哀れみなんかでもない。ただ、彼女に居てほしいだけなんだ。僕のすぐ横に、前でも良い。そこに彼女が居ればそれだけで良いんだ。――でも、それは叶わない。叶う事は無い。
世界はいつだって正しく、美しく、残酷だった。
僕は泣いた。泣き続けた。
そして、今日が何の日なのかを思い浮かべる。
今日は彼女が亡くなって一ヶ月。
今日は彼女の誕生日――。
「Happy birthday」
答えてくれる人はもう居ない。
「Happy birthday」
僕の声は風の中に消えていく。
「Happy birthday」
もう、彼女に届くことは無い。
――Happy birthday
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