愁傷

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 僕はその日、真夜中に目が覚めた。  普段、一度寝てしまったら目覚まし時計の音色が部屋を覆い尽くすまで起きる事が無い僕だったが、その日はふと目が覚めたのだ。  瞳を開けて見ると辺りは黒で塗りつぶされていた。何も見えないので直ぐに夜中だと言う事に僕は気付いた。  夜中に起きていてもすることは何一つ無い。だから、もう一度眠りに付こうと思い目蓋を閉じた。けれども眠気は一向に襲ってくることは無く、頭は完璧に冴えてしまったようだ。羊の数を数えてみても結果は同じ。眠る事が出来なくなったので、仕方無くゆっくりと上半身を起こす。  先ほどまで何一つ見えなかった暗闇に目が慣れてきて、少しずつ何がどこにあるのか見えるようになってきた。脇に置いてあった時計を確認する。午前三時。僕は徹夜しようとしても、いつも一時位には睡魔に負けて布団に突っ伏している人間であるので、この時間帯に目を覚ましている事は今まで無かった。  その事に対して少し驚きながら、僕は首を横に向け部屋を見渡す。そこはゴミ箱を引っ繰り返したかのように色々な物が散乱していた。――脱ぎ捨てられたまま放置されている洋服の山。雑に放り出された鞄。使い古された教科書や文房具。中身を食い尽くされた菓子袋。吸殻が山ほど溜まった灰皿――。それらは僕がまったく整理整頓を行わない人間だと言うことを物語っているようだ。  混沌とした我が部屋を見て自然とため息が出てくる。まったくもって僕には生活能力と言うものがミジンコ一匹分も無いみたいだ。足の置き場が無くなる位まで散らかるなんて一体何をしていたんだ。そう自分を叱咤してみる。――まあ、こんな風になるだろう事は一人暮らしを始める時から分かりきっていた事だ。しかしながら、これだけ荒れていれば生活するのが困難になると言うのが分かっている癖に、何も片付けをしない自分自身に対して苦笑してしまう。もう少しだけで良いから、真面目な人間になっていればこんな事は思わなかっただろうに。まったく、なんて駄目人間なんだ。
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