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視線を煙から再びベランダの方へと移す。先ほど眺めたときと何も変わらずに街がさんさんと輝いている。
そして僕は視線を上へと――空を見上げた。
暗黒世界。そんな言葉そのものみたいな世界に小さな星がポツリポツリと寂しく散らばっていて、微かな光が目に飛び込んでくる。その光は頼りない位の明るさしかない。やはり空気の綺麗な所、山の中とかビル街から遠く離れた田舎町でなければ、犇き合うような星空を目にする事は出来ないのか。
街の星と空の星。比べると、街の方が断然明るい。数も多い。強く輝いている。だけど空の星はそこまで明るくないのに何故だか心に突き刺さる。それは人工と自然の差。目的があって作られたのか、理由もなしに創られたのか。それだけの違い。なんだ。やっぱり夜空の方が素晴らしいじゃないか。
そんな風に思った自分の考えに対して苦笑する。なんて下らない事を考えているんだろうか。星がどうであれ街灯がどうであれ、美しいモノには変わりが無い。どちらもしっかりとそこに存在している。それで良いじゃないか。
空に目を移すと、僕の前から消えてしまうかの様な光。
下を向くと、精一杯存在を証明するかの様に見える光。
その二つの景色は、僕を感傷的にさせていくような気がして、
綺麗だなぁ、と僕は小さく呟いた。
――そうして、ふいに僕は気付く。
タバコよりも街灯よりも星よりも光り輝くモノを。
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