運命に気づかぬままに

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ホウエンやカントーなどからはまた離れた場所にある、イッシュ地方。 そのとある港に、一隻の大きな船が到着した。 「やっと着いたか…。これだから船旅は苦手だ。」 船の中から出てくる乗客達の中に、疲れたような表情の青年か一人。 黒いジャンパーにジーンズ、見た目は完全によくいる若者のそれだ。 「まずはアララギ博士の所だが……遠いな。」 開いたタウンマップを見て愕然とする青年。 彼は長旅の疲れを背負ったまま、港を後にするように歩き始めた。 またとある日の朝。 「うわー!寝過ごした寝過ごした!」 一人の少年が慌てて家の階段を降りている。 「あっ!これは忘れちゃいけないか!へへっ。」 ウキウキしながら青色に白いラインが入った帽子を被る。 そして元気良く外に出た。 その家の前には彼を待ち侘びた、正しくは待ちぼうけた同年代と思われる男女が立っていた。 「遅いぞ馬鹿。」 待ちくたびれた少年がいらついたように口を開いた。 「バカはないだろ、バカは!」 「なら時間くらい守れ。」 「まあまあ、落ち着いて落ち着いて…。」 言い争う少年二人を、少女が必死に笑顔で止める。
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