参 イトククリ

70/77
前へ
/342ページ
次へ
 それを聞いてほっとする。何も言及しないという事は、目立った怪我もなかったのだろう。詳しいところは直接見て聞くにしても、那由多もしっかり働いたようだし、それだけでもよかった。 「さてと、お仕事しちゃいますかねー」  昨日と同じように両手を広げ、自らの能力の名を呟く優子。昨日とは違い、軽傷が多いからか、糸は二人の体を撫でていくだけだ。それだけで切り傷はふさがり、にじんでいた血が消える。「ちょっきん」とはさみの真似事をする頃には、千束も宗則も傷一つ残っていなかった。 「それじゃあ後はご自由にどうぞー。宗則君は家に帰ったら連絡くださいねー。説教タイムが待っていますから」
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

791人が本棚に入れています
本棚に追加