参 イトククリ

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 投げやりに言って、宗則はそっぽを向いた。よく分からない。まあ那由多の時のように無駄に楽しむ事もないだろうと、ごく普通に、医者が患者の容体を調べるように皮膚をなぞる。顔をそむけられているので宗則の反応はいまいちうかがえない。 「ん……っ」  左胸に手のひらを乗せると、わずかに声を漏らして宗則がこちらに視線を向けた。手全体にまとわりつくような感覚に、ここに力が集中していると分かった。 「……千束ちゃん。本当に何も盛ってない、よね?」 「さっきも言った通りだって。……んー……」  どうやって吸い取ろうか考える。このまま吸い上げられればそれでいいのだが、どうも上手くいかない。イメージがはっきりしないというか。仕方なく千束は上体を折り曲げると、平らな胸に舌を這わせた。
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