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「那由多(なゆた)、うるさい」
「ぁあ? お前が静か過ぎんだよ。それよりも戦だって戦! 次期当主決めるんだってよ!」
無遠慮に部屋に入り、バンバンと音を立てて託志の背中を叩く少年、那由多。託志は叩かれる度にげほっげほっと肺の息を吐き出していた。が、抵抗はしない。
「一族の若者が互いの力をぶつけ合う……くーっ、燃えるぜっ!」
「あ、そう」
盛り上がっている那由多に対し、託志は全く興味がなさそうだった。畳に伸びたまま動こうとしない。
「もちろんお前も参加するよな?」
「何で?」
那由多の確認とも言える問い掛けに疑問で返す。那由多は思いきり戸惑った顔をした。
「な、何でってお前、戦だぞ? 三代に一度だぞ? 優勝したら次期当主だぞ?」
託志はふーと息をついて、元から抜けていた力をさらに抜いた。
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