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沸き上がる好奇心に負け、リオンは木を支えに立ち上がり、足を引きずるようにしてゆっくりと近付いた。
近くまでなんとか歩くと、力尽きたように膝をつき、恐る恐る手を伸ばす。
ビクッ
触れただけで、黒い塊が反応した。
『誰だ?』
緩慢な動きで、頭をもたげる。
「僕はリオン。君は…猫?」
『違う!俺は、聖獣だ』
手のひらに乗りそうな小さな黒い体に真っ赤な瞳。
猫より幾分か丸い耳。
ふさふさな尻尾。
背から生えた漆黒の翼。
「確かに、猫じゃないね」
リオンは納得して頷いた。
「君の名前は?」
『名前…?名前とは何だ?』
「えっ?名前を知らないの?名前はねぇ、その人物を示す物だよ。君は何て呼ばれてたの?」
『呼び名?俺は…"穢れた子"と呼ばれていたが』
「ええ!?誰に?」
リオンは驚きを隠せず、目を大きく見開いた。
『家族とか…他の群れにも』
リオンの反応に困惑しながら、小さな獣が答えた。
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