序章

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「とりあえず、お父さんと合流するかしないと、また魔物に襲われるかも」 『その可能性は十分に有り得る。 だが、最初に転移した場所にはまだ魔方陣が描かれているのでは?』 不思議そうな顔をするジルに、リオンは自嘲気味な苦笑を返した。 「僕は魔法が使えないから、魔方陣はダメなんだ」 『むう…、いや。なんとかなるかも知れないぞ』 考えるように唸りながら、ジルは首を振った。 「どういうこと?」 首を傾げるリオンに、ジルは真剣な顔を向けた。 『リオン、契約を結ばないか? もしリオンに魔力が無いのなら、本来の契約ではなく仮契約になるが』 「契約…?それって使い魔契約の事?」 『そうだ。そうすれば、俺の魔力をリオンを介して魔方陣に流せる』 「本当!?わかった!でも契約って、何をするの?」 『本来の契約ならば、お前の魔力を少し貰うが、今回は仮契約だからな。 口頭での口約束の様な物だ』 「口約束、ってそんなので良いの?」 『ああ。俺の言葉に了承してくれれば良い。いくぞ? <我、汝を主と認め忠誠を誓おう。 汝、我を従え得る覚悟は在るか>』 「はい、あります」 『<良かろう。ここに契約を成さん>』 詠唱が終わった瞬間、リオンの手の甲とジルの手の甲に光が走り、紋様を刻んだ。 『契約完了だ』 「これが、契約…」 何処か呆けた顔で右手の甲を見た。 複雑な紋様が浮かぶ甲を。 『さて、転移の魔方陣を探すぞ。まだ来たときの魔力が残っているかも知れないからな』 「そっか!それを辿れば魔方陣を見付けられるんだね?」 目をキラキラと輝かせるリオンに苦笑をこぼし、ジルは頷く。 『さぁ、行こう』 ジルに促され、リオンは歩き出した。 それは、先程までの重々しい足取りなど考えられない程、軽かった。 これが、僕とジルの出会いだった。
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