第一章

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「それじゃあ、お祖父ちゃん。行ってくるね」 諸々の荷物と我が身と同じくらい大切なハープを持ち、15歳になったリオンが玄関を振り返って言った。 「うむ。気を付けて参れ」 胸まで隠す髭を撫で、リオンの祖父、ネーゲルは孫を見ていた。 「うん!暫く会えないけど、食事に気を付けてね。行って来ます」 太陽の様に笑い、外に足を踏み出していく背中を見送り、老人は小さく嘆息した。 「お前達が死んで、はや5年。リオンは心優しき少年に育ちましたぞ。 アルファード、ミリア、クレア。 どうか見守っておやり。 あの子の成長を」 静かな呟きは、誰にも聞かれず、虚空に消えた。 「やれやれ。掃除でもしようかのぉ」 老人は、しっかりとした歩みで自室に向かった。 5年前、突然訪れた時のリオンを思い出しながら。
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