1738人が本棚に入れています
本棚に追加
/328ページ
「それじゃあ、お祖父ちゃん。行ってくるね」
諸々の荷物と我が身と同じくらい大切なハープを持ち、15歳になったリオンが玄関を振り返って言った。
「うむ。気を付けて参れ」
胸まで隠す髭を撫で、リオンの祖父、ネーゲルは孫を見ていた。
「うん!暫く会えないけど、食事に気を付けてね。行って来ます」
太陽の様に笑い、外に足を踏み出していく背中を見送り、老人は小さく嘆息した。
「お前達が死んで、はや5年。リオンは心優しき少年に育ちましたぞ。
アルファード、ミリア、クレア。
どうか見守っておやり。
あの子の成長を」
静かな呟きは、誰にも聞かれず、虚空に消えた。
「やれやれ。掃除でもしようかのぉ」
老人は、しっかりとした歩みで自室に向かった。
5年前、突然訪れた時のリオンを思い出しながら。
最初のコメントを投稿しよう!