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ふとリオンの前に誰かが座ったのに気付き、視線を前に移す。
リオンの周りは皆が避けるようにがら空きだったので、少し驚く。
しかし、その姿を見て合点がいった。
目の前に座ったのは平民の少年だった。
此方からでは顔が見えないが、体格的に男だと判断した。
さらさらな漆黒の髪は長すぎず短すぎない、丁度良い長さ。
リオンはしかし、別の事で驚いた。
(この人、魔力の量と質、どちらも学生の域を越えてる。優秀なんだなぁ)
肌で感じる感覚を頼りに、リオンは思った。
「ねぇ、君。何て名前?僕は、リオン=マレーだよ」
にこにこと微笑み、リオンは軽く彼の肩を叩いた。
「…………俺は、ゼネス=オルドー」
振り返った彼は、深海の様な深い碧の瞳でリオンを見た。
「よろしくね、ゼネス君」
さらに笑みを深めて、リオンは右手を差し出した。
「……ゼネスで良い」
そう言って、ゼネスはリオンの手を握り返した。
「じゃあ、僕の事もリオンって呼んでね」
晴れやかに笑うと、ゼネスは無表情で頷いた。
「席に着いて下さい。HRを始めます」
丁度その時、担任の先生らしき男性が教室に入って来た。
焦げ茶色の短髪に精悍な顔付き、がっしりとした体躯の、なんとも頼もしそうな先生である。
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