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呆然と立ち尽くしていたリオンは、暫くの後、ゆっくりと部屋を見回した。
「これ、寝室?」
部屋の角に堂々と鎮座しているキングサイズのベッドに、それでも狭いと思わせない部屋。
ベッドの横には大きめの勉強机、さらに壁に寄り添って立つ本棚。
ベッドの反対側の壁に、収納力抜群のクローゼット。
床には美麗な刺繍が施された絨毯に、天井にはシャンデリアとまでいかないものの、十分に豪華な室内灯。
「お金、使いすぎ…」
最早呆れの見える表情を浮かべ、リオンは荷物を床に置く。
次いで、リオンは荷物の中から、ケースに入ったハープを取り出した。
「これは、大切な物だからね…」
まるで愛おしいものを見るように、リオンはハープの支柱を撫でた。
10歳の誕生日の為に、父がこっそり作ってくれていた誕生日プレゼント。
その数日後に、魔物に襲われた村は…、地図から消えた。
リオンも深い傷を負い、今も消えずに背中に残っている。
いつも、眼裏に浮かぶ。
自分を庇って傷を負った、ジルの姿。
『俺はどうせ死ぬ。だから、お前に俺からのプレゼントだ』
そう言って、己の残った魔力を、リオン流し込んだジル。
『お前が弾くハープを、また聞きたかったよ。
今までありがとう、リオン』
意識を失った体から出た、白い光を放つ魔方陣で、何処かに消えたジル。
リオンはジルが死んだから、身体が元の世界に返されたのだろうと考えている。
「僕が…、弱かったから…」
きつく、拳を作って唇を噛んだ。
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