夢への一歩

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「パキーン」 白球は無情にも外野の頭を越えていった。 ホームにはこの回7人目のランナーが帰ってきた。 「主審!ピッチャー交代!」 「ちくしょー!なんで打たれんだよ!」 「落ち着け!翔!」 「すいません。少しベンチ裏で頭冷やしてきます。」 あの事故からはや1年が経った。右投げに転向して、コントロールも球速もサウスポーだった頃と遜色ないほどになってた。 しかし、マウンドに上がる度に打たれ、ノックアウト。 こうしてベンチ裏で泣くのは何度目だろうか。 「なんでだよ……なんで………なんで………打たれんだよ……。」 野球の神様もあれ以来、姿を見せない。 「なぁ……神様………俺に足りないものってなんだ?………。」 「監督!新垣はもうピッチャーとしては無理です!野手に転向させましょう!」 「却下だ。荒木コーチ。」 「なんでですか?新垣が苦しむ姿を見ても平気なんですか?」 「俺だって、あいつが苦しむ姿は見たくない。だがな、逃げ道を作ってやることも、逃げることも、誰にもできる。あいつには頑張ってもらいたいんだ。ピッチャーとして。」
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