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まだ肌寒い春の初め。
高校の門の前には受験合格者発表と矢印が書いてある看板が立て掛けてある。受験者達が不安の色を顔に浮かべ、受験カードの自分の番号と、ボードに示してある番号とを見返している。
歓喜に舞う声もあれば、落胆の声もあり、寒さに負けない熱気がボードの前にはあった。
そこに
「…」
「さっ!小春、行ってきな!」
背中を押され、一歩前に出たあたし。
椎名 小春。
まるで戦場に足を踏み入れているような緊張感とプレッシャーだった。
朝から気合いを入れて作ってきた頭の上のお団子も、なんだか少ししぼんだような気がする。
お母さんがその後ろでガッツポーズを見してくれているけど、勇気づけているつもりなのか。あたしはちっとも嬉しくなかった。
唇を噛みしめ、前に垂れ下がったマフラーを後ろに持っていくと、重い足取りでボードの前に歩み寄った。
す、凄い迫力…。
皆の目が血走っていた。
あたしはそれを見て怖くて泣きそうになったが、自分の番号が見える位置までどうにか足を進めていった。
えと…
217番。
背伸びをしながら見る。
胸がドキドキしすぎて破裂しそうだった。上から段々と見下ろしていき、自分の数字に近づいてきた。
212……214……215……
…2…17……
あたしの番号を見つけた。
「あった――――!!!」
あまりの嬉しさに絶叫!跳び跳ねながら喜びを全身に表してた。その時。
「……あの。頭の団子邪魔でボード見えねぇんスけど」
後ろから低めの声がした。
振り返ってみれば、中々のイケメンさんが立っていた。
「喜んでるとこ悪いけど。団子が邪魔なんスよ、まじで」
……は?
ガッツポーズのまま、あたしはフリーズした。
なんだ、この男子。
第一印象は最悪だった。
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