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阿部君と千代ちゃんと三橋君
「あ…あ……あべ…あべく…んっは…ヒクッお…俺のことヒクッかんがっえてくれてるのに…グズッおれ…あべくんの…グズッ……」
三橋君と阿部君がケンカをしたらしい。(と言っても阿部君が怒鳴って三橋君が私の居る水道まで逃げて来ただけなんだケド……)
「阿部君は三橋君になんて言ったの?」
「ヒクッ速い…球はっ…まだ投げられないってグズッ…でも、お、俺、速い…球、投げたぐでぇ…グズッヒクッ」
「三橋君はちゃんと阿部君にそのこと言った?」
「…?その、こ、と?」
「三橋君が速い球を投げたいってこと。阿部君に言った?きっと阿部君はわかってくれるよ?三橋君の気持ち。」
「三橋ぃぃぃ!!!!!!」
びくぅ!!
「阿部君。」
「あ、あ、あべく、阿部君」
三橋君はびくびくしてる。(小動物みたいだなぁ)
「篠岡。ちょっと外してもらっていいか?」
「あ、いいよ?『がしっ』…ゴメンなさい…無理みたいだよ…」
三橋君が私の腕を掴んで離さない。こういう時男の子なんだなって思う。
「あ、あべ、く、ん……ヒクッ怒って「怒ってねーから」……」
阿部君はいつもよりゆっくりと落ち着いた声で話だした。
「お前が速い球投げたいのはわかってるから、まだ今は焦んなってこと!!」
「……うん!!わ、かっ、た!!いまはっ我慢、する、よ!!」
三橋君はうれしそうに笑った。
「し、しのーかさん!あ、ありがと!」
と言うと走ってグランドへ行ってしまった。
「……阿部君は戻らないの?」
阿部君は眉間にシワを寄せて私を見ていた。(恥ずかしい///)
「しのーかってすげーな、あの三橋を手なずけてる。」
「手なずけるって!!」
「あ、わり。言い方間違えた。」
「…でも阿部君もすぐに仲良くなると思うよ?」
「だといいんだけどな……」
と言い残して阿部君は行ってしまった。
数時間後、グランドにはまた阿部君の怒鳴り声が響いた。
(仲良くなるのはまだまだ先かな…?)
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