もうひとりの営業マン。

5/15
前へ
/30ページ
次へ
「そんじゃ皆さんお揃いってことで!花見でも始めますか!」 保志沢が音をたてて両手を合わせたのを合図に、全員が歩き出した。 どうやら座れる場所が確保してあるようだ。 保志沢はあやのと並んで、他人と距離を置く星也は一歩下がって歩く。 その後方を瀬名と滝本が追った。 「お前、ちゃんと場所とっておいたんだ」 「んー、夕方に来たらもう座れる所無かったんだけどさ、声掛けたら譲ってくれた人がいたんだよ。優しいよねぇ」 やり取りする保志沢と星也の後ろで、自然と横に並んだ滝本が瀬名に話し掛ける。 「ほし…じゃなかった、マスターから聞いたんですけど、瀬名さんはずっとデザインやってるんですね」 既に呼び方までレクチャーされている事に少々驚く瀬名。 「はい…あ、滝本さん敬語使わなくていいです。私のが絶対年下ですし」 「そう?じゃあ遠慮なくタメ口でいくね。 でもそっちこそ、僕に対して敬語じゃなくていいし『涼』でいいよ。 ここはみんな、下の名前で呼びあうみたいだから」 滝本―――涼は屈託のない笑顔で提案する。 きっと誰に対してもフランクな姿勢なのだろう。 気さくな態度にのせられてか、どちらかといえば普段控え目な瀬名も饒舌になってしまう。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6850人が本棚に入れています
本棚に追加