もうひとりの営業マン。

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「でも、私なんかまだ全然で。ずっとって程じゃなくて。専門学校の二年間バイトさせてもらってたぐらいです。 …涼…さんはこっちの業界は初めてですか?」 「うん、デザインっていってもインテリア系の勉強ならした事あるんだけどさ。 前も営業マンやってたけど、Webや広告系の業種は初めてだから色々教えてね」 「そんな、こちらこそ!私に出来る事があれば」 (話しやすくて気さくな人だなぁ。 営業を仕事にしてるだけあるかも…) 自分とは正反対の長所を持つ涼に瀬名は感心した。 ふと前方の歩みが止まる。 桜木や屋台から離れている為か人影はあまりない。 見渡せば右手に東屋、左手には小さな池が広がる景色。 池沿いの奥側には満開の桜が等間隔で並んでいる。 ライトアップの効果だろうか。 闇夜に浮かぶそれは昼間とは違い、幻想的な美しさを放っていた。 「綺麗だね。桜の真下じゃなくても充分雰囲気あるよ」 あやのが感嘆の声を漏らした。 東屋の中は中央に木製の角テーブル、周りを丸太椅子が囲っている。 テーブル上には大量のアルコールやジュース、屋台の焼そばや串焼きなどが入った袋が既に置かれている。 早目に来ていた保志沢とあやのが用意しておいたものだ。 「みんな、何ボーッとしてんの!早く始めようよ!」 「いや、よく盗られなかったなと思って…」 「星也さん、私もそう思います…」 一番に椅子に腰掛け手招くあやのを他所に、星也と瀬名が呟いた。
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