もうひとりの営業マン。

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「あ、そうそう。瀬名ちゃんも彼氏いないみたいだし。やったね!」 「…だ、だから違…」 「私もだいぶ一緒に働いてるけど、彼女は頑張り屋さんだからオススメだよ。 ちょっと控え目なところもあるけどね。壁を作ってるみたいな、素の自分を隠してる気がする。 まぁ、一歩距離があるのは星也君もそうなんだけど」 お酒のせいか、涼を無視して語り出すあやの。 おつまみ片手に一人物思いにふけっている様子の星也を見やると、ふと目が合う。 「なかなか仕事上の間柄で、素の自分を見せれる奴はいないと思うぞ」 星也が割って入った。 いつからかあやのの言葉が聞こえていたようだ。 皆が皆、本心をさらけ出して働いていては会社は成立しない。 誰かが何かしら繕わずには仕事は円滑に進まないだろう。 それに仕事の顔と私生活の顔、オンとオフがあるのはごく当たり前の事。 もちろん、あやの自身そんな事は百も承知だ。 常日頃全てありのままの自分かと言われれば違うし、当然他人にそこまで望んでいない。 だけど、瀬名は他人に心を開けない何かを抱えている―――そんな気がしてならないのだ。 「…なんか私、余計な事喋っちゃったね。 営業気質なのかな、今日初めて会うのに涼君って話しやすくて」 「はは、よく言われます」 「小池は酒が入ると強引だからな。気を付けろよ」 そう涼に警告する星也は、まるで過去に被害でも遭ったかのような口ぶりだ。
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